女性が離婚を考えるとき、やはり大きな壁となるのが、離婚後に自ら生計を立てていけるかどうかです。現在専業主婦の場合、また、子どもを引き取りたい場合などはさらに、条件が厳しくなるといえます。
それでも、どうしても離婚したいなら、感情的にならずにしっかりと離婚後の生活を安定的に送るための準備を整えることが重要です。以下7つのポイントをしっかりと押さえて、ひとつひとつクリアしていきましょう。
- 離婚手続きに関する法律知識を蓄える
- 自由に使えるお金を確保する
- 離婚後の住まいを探す
- 離婚後の就職先を探す
- 離婚後にもらえるお金を試算する
- 離婚後の生活費を試算する
- 夫の不倫を知っても感情的にならないこと
離婚手続きに関する法律知識を蓄える
離婚の際には、慰謝料や財産分与、養育費などのお金のこと、親権や面会交渉権などの子どものことなど、決めなければならないことがたくさんあります。また、これらを決める際に夫と折り合いがつかなければ、慣れない法的な手続きも多く発生することになります。離婚を有利な条件で進めるためにも、離婚手続きはじめる前に、ある程度の法律知識を持っておくことが重要です。
離婚の方法
離婚の手続きには、主に以下の3つの種類があります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 裁判離婚
協議離婚とは、夫婦間の話し合いによる離婚です。話し合いで双方の離婚の合意が得られなかった場合、また、慰謝料や財産分与など離婚の合意以外の問題でお互いが納得しなかった場合は、調停離婚へと進みます。
調停離婚とは、調停委員という第三者を介して離婚に関する話し合いを行う制度です。離婚調停では夫婦が直接話し合いをすることはなく、調停委員がそれぞれから聞き取りを行い、両者の言い分をまとめる役割を担います。
調停においても問題が解決しなかった場合は「調停不成立」となり、離婚裁判の手続きへと移行します。離婚裁判では離婚するかしないかを決めるのに双方の合意は必要なく、裁判所の判断で決定が下されます。裁判所の判断によっては相手の合意なく離婚が成立するため、離婚を強く望むほうにとっては最終的な手段だといえます。しかし、離婚裁判は長期化するケースが多く、精神的にも経済的にも大きな負担となります。
審判離婚とは、調停が成立しなかったときに、離婚の成立やそのほかの問題に関して裁判所の裁量で判断を行う制度です。しかし実際には、審判離婚の手続きがとられるケースはほとんどありません。
離婚の際に決めておかなければならないこと
夫婦に未成年の子どもがいる場合、親権者を定めなければ離婚することはできません。そのため、どちらが親権をとるかについては、離婚の際にしっかりと話し合っておく必要があります。
慰謝料や財産分与、養育費などそのほかの問題に関しては、離婚後に改めて取り決めを行うこともできますが、一度離婚してしまうと相手が話し合いに応じない可能性も高くなるため、離婚時に発生する問題は可能な限り離婚前に解決しておくことがベストです。
協議離婚の場合は取り決めを公正証書に
国内の離婚のおよそ9割は協議離婚だといわれていますが、慰謝料や財産分与、養育費などのお金の問題、面会交流権など親権以外の子どもの問題に関して、協議離婚の際にきちんと取り決めをしている夫婦はそれほど多くはありません。
自分が子どもの親権をとりたい場合、離婚後の生計を立てていくうえで特に重要になるのが、夫から毎月支払われる養育費です。2011年度に厚生労働省が発表した「全国母子世帯等調査結果報告」によると、離婚時に養育費の取り決めをしていない夫婦は6割、夫から養育費をもらったことがない妻も6割に上りました。
「離婚後に元夫から養育費やそのほかのお金が支払われない」という状況を回避するためには、たとえ協議離婚であっても、単なる口約束で済ませるのではなく、取り決めをきちんと公正証書に残しておくことが重要です。公正証書は公証役場で公証人に作成してもらう文書であり、書面の内容には法的強制力があります。もし、取り決めに従って金銭を支払ってもらえないことがあれば、執行認諾文言という、即時の差し押さえを受け入れる旨の文言がある場合には、財産差し押さえなど強制執行の手続きをとることも可能です。
子どもがいる場合の別居について
夫に離婚を切り出してみたものの応じてもらえなかった場合、別居という選択もあります。しかし、夫婦の間に子どもがいて、その子どもの親権を自分が持ちたい場合は、子どもを連れて出て行ったほうがいいでしょう。なぜなら、親権が争いになった場合に、いずれかを親権者とするかの判断要素として、子どもと一つ屋根の下で暮らした期間が長いほうを優先するという原則があるからです。
可能な限り穏便に話し合いを進め、自分が子どもを連れて出て行くことに納得してもらうようにしましょう。
自由に使えるお金を確保する
夫が離婚に納得してくれた場合も、そうでなかった場合も、離婚後や別居期間中に住む場所の敷金・礼金と、当面の生活費くらいは手元に持っておく必要があります。自由に引き出せる自分名義の口座にどれくらいの貯金があるのかを確認し、なければ生活費を工面して、少しずつ離婚準備金を貯めていくようにしましょう。
離婚後の住まいを探す
離婚後は、夫か妻のどちらか、または、両方が現在の家を出て別の住まいで暮らすことになります。あるいは離婚より先に別居することになった場合、妻のほうから離婚を切り出すとすれば、妻が家を出て行く可能性が高くなるでしょう。
いずれにせよ、どのような状況になったとしてもすぐに対応できるように、離婚後の住まいにある程度のめどをつけておくと安心です。実家が近くにある場合は一時的にでも面倒を見てもらえれば、その間に新たな住まいを探すこともできます。
両親が近くに住んでいない、両親に相談しづらいなどの事情がある場合は、公営住宅であれば家賃を安く抑えられます。ただし、自治体によって入居資格などが異なるため、どの地域に住むか、公営住宅に空きがあるかなども含めて検討してみましょう。
離婚後の就職先を探す
特に専業主婦である方や、子どもの親権者になりたいと考えている方は、離婚後の生活の安定のため、離婚後の就職先にもある程度めどをつけておかなければなりません。働いている方の場合も、現在の収入だけで生活費をまかなっていくことが厳しい場合は、転職などを考える必要があるでしょう。再就職・転職先がなかなか見つかりそうになければ、離婚前に資格を取得するなどしてキャリアアップを図りましょう。
また、子どもと一緒に暮らしたい場合は、自分が働いている間の子どもの預け先も考慮にいれておかなければなりません。離婚後の住まいの近くに保育園などがないかチェックし、可能であれば自分が働いている間だけ子どもの面倒を見てもらえないか、実家に相談することも検討してみましょう。
離婚後にもらえるお金を試算する
離婚後に夫からもらえるお金は、当面の間の生活費に充てられます。離婚後に夫に請求できるお金には以下のようなものが挙げられるため、それぞれいくらくらいになるのか計算してみましょう。
慰謝料
離婚の慰謝料とは、離婚の原因となった夫の不貞行為やDVなどで受けた精神的苦痛に対し請求できるお金のことです。相場は、受けた精神的苦痛の程度によって数十万円から300万円ほどといわれていますが、慰謝料額を決めるのに明確な基準などはなく、ケースバイケースです。50万円程度と低額に収まることも珍しくないため、相場はあってないようなものだと考えましょう。
また、離婚原因が性格の不一致や価値観の違いなどであり、夫に離婚に至る責任があるとはいえない場合、慰謝料は請求できない点に注意が必要です。自分が夫から慰謝料を支払ってもらえるのか、支払ってもらえるとしたらいくらぐらいになるのか、法律事務所の無料相談などを活用して調べてみるとよいでしょう。
財産分与
夫婦が婚姻生活中に築いた共有財産をそれぞれに分配することを財産分与といいます。夫名義の口座にある預貯金や夫が働いて得た収入であっても、婚姻後に築いた財産であれば共有財産と認められます。また、財産分与は専業主婦であっても受け取ることが可能です。
財産分与の対象となるのは現金や預貯金のほか、株式や不動産などです。離婚を切り出した後ではこれらの共有財産を隠されたり、勝手に売却されたりする心配があります。必ず離婚前に共有財産の全体像を把握し、できれば夫の源泉徴収票、給与明細、預金通帳などのコピーか写真をとっておきましょう。不動産に関しては時価がかかわってくるため、近隣の不動産会社で無料査定を行ってもらうことも検討してください。
なお、結婚後に増えた財産であっても、相続したものや、もともと持っていた財産およびこれに対する利息等で殖えたものは、特有財産として分与の対象になりませんから注意が必要です。
養育費
養育費は、親の子どもに対する扶養義務の一環として子どもの生活の安定を図るために支払うべきお金です。調停や裁判といった裁判所を介しての養育費の決定では主に算定表を用いて行われるため、以下の算定表からもらえる養育費の金額を計算してみましょう。
養育費・婚姻費用算定表婚姻費用
婚姻生活にかかるもろもろの費用のことを婚姻費用といいます。婚姻費用は離婚後にもらえるお金ではありませんが、離婚に先だって別居する場合、自分の収入よりも夫の収入のほうが多かったり、子どもを連れて別所をしている場合であれば、別居中の生活費として婚姻費用を支払ってもらうことが可能です。
婚姻費用を請求するには、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」の申し立てを行います。婚姻費用の金額も算定表を用いて決定されることが多いため、以下の算定表から試算してみてください。
養育費・婚姻費用算定表離婚後の生活費を試算する
子どもと一緒に暮らしたい場合は子どもの養育費も含め、離婚後に毎月いくらの生活費がかかるかを割り出しましょう。そして、新たな就職先で得られる自分の収入に夫からもらえるお金を加味し、自分一人で生計が立てられるかを考えます。離婚後にシングルマザーとなる場合は児童扶養手当や住宅手当などの公的扶助も受けられるため、そういった国や自治体の制度を活用することも考慮に入れましょう。
生活費や収入を試算してみた結果、自分で生計を立てていくことが難しそうであれば、一度冷静に考えて離婚を考え直すのも選択肢のひとつです。感情的に切羽詰まっていたり、DVなどのために緊急性があったりする場合を除き、とりあえず婚姻生活を続けていくか別居するかを考えて、その間に離婚の準備を進めていく方法もあります。
夫の不倫を知っても感情的にならないこと
代表的な離婚原因のひとつが相手方の不貞行為(浮気や不倫)ですが、不倫の事実を知った途端、感情的になって相手を問い詰めるのは得策ではありません。夫が不倫していることを知ってしまったとき、精神的なダメージは非常に大きなものになるでしょうが、ひとまずその気持ちはそっと心にしまって、相手が言い逃れできないような決定的な証拠を集めることが重要です。
協議離婚や調停離婚が成立せず最終的に裁判で離婚を争うことになった場合、慰謝料が発生するか、発生するとしたらいくらになるか、そのほかさまざまな条件を自分の有利に進められるかは、すべて夫の不貞行為を証明できる確実な証拠の有無にかかっています。
DVやアルコール・ギャンブル依存症などが離婚原因の場合も、体に残った傷跡や現場を収めた写真・動画などを持っておくことが重要です。こうした確実な証拠は、離婚調停においても調停委員を味方につける有益な材料となります。