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離婚調停とは
離婚調停とは、離婚する場合の条件などを話し合う家庭裁判所の調停手続のことです。離婚調停は、正式には「夫婦関係調整調停」といいます。「夫婦関係調整調停」には、離婚を目的としたものと、夫婦関係を円満に調整することを目的としたものとがあり、この内、離婚を目的したもののことを一般に離婚調停といいます。
離婚調停にかかる費用
離婚調停にかかる費用は、基本的には、申し立てに必要な1200円分の収入印紙と連絡用の郵便切手(東京の場合は966円分)だけです。弁護士に依頼する場合は、弁護士報酬が別途かかります。
離婚調停は弁護士に依頼すべきか?
離婚調停は弁護士に依頼すべきでしょうか。弁護士に依頼するメリットとデメリットをそれぞれみていきましょう。
メリット
①手間が省ける
詳細は後述しますが、離婚調停の申し立てには書面がいくつも必要であり、申し立て後も裁判所からの求めに応じて書面を用意しなければならず、不慣れな一般の人にとっては、結構な負担になります。これを弁護士にやってもらえるとかなり楽になります。また、調停期日も弁護士だけ出席して本人は同席しないことも可能です。ただし、離婚の調停や和解が成立する回の期日には本人の出席が必要ですし、戦略として本人も出席したほうがよいということもありますので、本人がどの程度出席すべきかについては弁護士に確認する必要があります。一般的には、本人にも同席を求める弁護士が多いと思われます。
②主張に説得力が増す
弁護士の行う主張は、書面にしても陳述にしても、しっかりと論が通っており積極的です。ポイントを押さえた主張を行うことで、調停を有利に進められます。
③心強い
離婚に際して、不安に感じることも多いと思います。弁護士は、依頼者の不安に感じていることを丁寧に説明し、不安を取り除いてくれます。そのような精神的な支柱として役割も期待できます。もっとも、弁護士によって自分に合う・合わないが変わりますから、弁護士選びは慎重に行わなければなりません。
④調停委員に本気度が伝わる
離婚調停には、度々痴話喧嘩が持ち込まれることもあり、その度に調停委員を辟易させます。一方、弁護士をつけて調停に臨むとなると、その本気度がうかがえます。調停委員としても「本気で離婚したいのだな」と感じ取り、離婚に向けて真摯に対応してくれるものと思われます。
⑤裁判への移行がスムーズ
調停が不調(不成立)に終わった場合、裁判で離婚を争うことが考えらます。裁判は一般の人が弁護士に依頼せずに対応することは極めて難しいので、裁判になった場合は、通常、弁護士に依頼することになります。どのみち弁護士に依頼することになるのであれば、早い段階から依頼しておいたほうが、弁護士としても状況を把握しやすく、本人としても余計な骨折り損が生じないので、メリットがあるといえます。
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なる場合がございます。
デメリット
デメリットとしては、弁護士費用がかかることです。それ以外には、特にデメリットはありません。弁護士費用の相場は、大体、着手金で20~40万円程度、離婚成立の成功報酬で同じく20~40万円程度、財産分与、慰謝料、養育費、婚姻費用などの経済的利益に対する成功報酬として、得られた経済的利益の10~20%程度、そのほか、親権を争っている場合は親権獲得の成功報酬がかかることもあります。
離婚調停の申し立て方法について
どこに申し立てる?
離婚調停は、相手方の住所地の家庭裁判所か当事者の合意により決められた家庭裁判所に対して申し立てます。例えば、夫婦が別居しており、夫が東京、妻が大阪にそれぞれ住んでいる場合において、妻が離婚調停を申し立てるときは、妻は自分が行きやすいからといって夫の同意なく大阪家庭裁判所に申し立てることはできません。夫の住所地の東京家庭裁判所に申し立てるか、そうでなければ、夫(または夫の代理人)と話し合って「じゃあ中間の名古屋にしよう」と夫側の同意を取り付けてから、その地の家庭裁判所に申し立てなければならないのです。
申立人
なお、申し立ては、夫婦のどちらからでも行えますが、夫婦以外の人が「あの夫婦を離婚させてくれ!」と申し立てることはできません。これは、その夫婦の間の子どもであっても同じです。「うちの両親を離婚させてください」ということも、やはりできないのです。
必要書類
求められる書類は、裁判所によって、異なることがあります。以下では、東京家庭裁判所における必要書類について説明します。
①申立書
申し立てには、申立書(原本と写し2通)が必要です。前述の通り、離婚調停は正式には「夫婦関係調整調停」という名称なので、申立書も「夫婦関係調整調停申立書」という名称になっています。入手方法は、家庭裁判所の窓口か、裁判所のウェブサイトにアクセスして印刷することもできます。写し2通は、本人控えと相手方送付用になります。裁判所に置いてある申立書は3枚複写式になっており、コピーをとる手間がなく便利です。また、記入方法については、それほど複雑ではありせんが、分かりにくい点をいくつか説明します。
まず、事件名欄には「離婚」と記入してください。次に、申立人住所欄については、相手方に住所を知られたくないという事情があっても、記入してください。住所を知られたくない場合は、写しをとる際に、住所欄を覆い隠したり塗りつぶしたりして分からないようにしましょう。そして、養育費、財産分与、慰謝料についての記入欄について、金額がはっきりしない場合は、「相当額」を選んでください。
続いて、年金分割に関する記入欄について、請求できる最大値である半額を求める場合は「0.5」を選択し、それより少ない割合を求める場合は空欄のほうのチェックボックスにチェックを入れ、空欄に求める割合を記入します。それから、「同居・別居の時期」欄について、同居と別居を繰り返している場合は、「同居を始めた日」には初めて同居した日を、「別居した日」には最近の別居を開始した日を記入します。
申立書の記入方法については、以上です。なお不明なことがあれば家庭裁判所で尋ねるとよいでしょう。
②戸籍謄本
申し立てには、夫婦の戸籍謄本(または、全部事項証明)も必要です。戸籍謄本は、本籍地の市区町村の役所で入手できます。3ヶ月以内に発行されたものを提出してください。郵送にも対応しているので、希望する場合は役所のウェブサイトで調べるか、役所に問い合わせましょう。
③年金分割のための情報通知書
さらに、年金分割についての申し立てが含まれている場合は、年金分割のための情報通知書が必要です。これは、年金制度ごとに必要で、発効日から1年以内のものでなければなりません。なお、原本のほかに、コピーも提出し、情報通知書が複数ある場合は、コピーの右上に「別紙1」、「別紙2」のように記入します。入手方法については、加入している(または、加入していた)年金制度の窓口にお問い合わせください。
④事情説明書
事情説明書は、夫婦が不和となったいきさつや調停を申し立てた理由等を記入する書類です。相手方には送付されませんが、閲覧が許可されることがあります。
⑤子についての事情説明書
子についての事情説明書は、申立人と相手方との間に未成年の子どもがいる場合に必要となる書類です。子どもをどちらが監護しているか等を記入します。こちらも相手方には送付されませんが、閲覧が許可されることがあります。
⑥進行に関する照会回答書
進行に関する照会回答書は、裁判所が調停を進めるための参考にする書類です。裁判所に対して配慮を求めたいことなどを記入することができます。期日に相手方と顔を合わせたくないといった要望を記入すると考慮してもらえます。顔を合わせたくなくない理由についても、裁判所の人が読んで納得できるようにしっかりと記入しましょう。この書類は、原則として相手方は閲覧できません。
⑦連絡先等の届出書
連絡先等の届出書は、裁判所から送られてくる書類の送付先や、電話番号についての届出書類です。相手方に開示してほしくない場合は、次の非開示の希望に関する申出書を添付します。
⑧非開示の希望に関する申出書
非開示の希望に関する申出書は、相手方等に開示してほしくない書類に添付します。必須の書類ではありません。
離婚調停の流れについて
離婚調停の申し立て
離婚調停を家庭裁判所に申し立てます。
裁判所から連絡がある
申し立てを行うと、初回の調停期日を決めるため、裁判所から連絡がありますので、そこで、自分の都合を伝えます。この連絡は、通常、申立人に対してのみ行われ、相手方にはありません。
期日通知状が届く
申し立てから2週間ほどで双方に期日通知状が届きます。
初回期日
一般的な初回期日の流れを紹介します。必ずしも、この通りに進むとは限りませんが、是非参考にしてください。
①回期日までの期間
申し立てから1~3ヶ月ほどで初回期日が開かれます。期日までの期間は裁判所の混み具合などの事情によって異なります。都市部の裁判所ほど期日まで期間がある傾向にあります。また、お盆の休廷期間を挟むと期間が延びます。
②持参する物
期日には、期日通知書、認め印(シャチハタ以外)、身分証の3点を持参します。
③出頭
期日通知書記載の期日に裁判所に出頭します。夫婦が裁判所の前で鉢合わせないように、出頭時間を30分ずらしてもらうことができます。出頭すると、夫婦別々の待合室で待ちます。
④進行予定の説明
まず、夫婦双方が同時に調停室に呼ばれて、当日の進行予定の説明を受けます。ここでも顔を合わせたくない場合は、その旨を事前に伝えておくことで、別々にしてもらえることがあります。
⑤申立人が話を聴かれる
まず、申立人から先に調停室に呼ばれ、調停委員から離婚を決心するに至った経緯などについて話を聞かれます。そして、話が終わると、再び待合室に戻されます。1回の面談時間は約30分間です。
⑥相手方が話を聴かれる
申立人の面談が終わると、次は、夫婦のもう片方の番です。同様に調停室に呼ばれて、申立人の主張内容を聴かされた後、反論があるかどうか、離婚に応じかどうかなどについて、話を聞かれます。時間は同様に約30分間です。話が終わると、再び待合室に戻されます。
⑦再び申立人と相手方がそれぞれ話を聴かれる
続いて、申立人が再び調停室に呼ばれて話を聴かれます。この面談の時間もやはり約30分間ずつです。
⑧次回期日についての説明
お互い2回ずつの面談が終わると、再び二人同時に調停室に呼ばれます(前述の通り、顔を合わせたくない場合は配慮してもらえる可能性があります)。そして、次回までの課題など、次回期日についての説明があって、この日はおしまいです。
⑨帰宅
お互い裁判所を後にする際も、鉢合わせしたくない場合は、帰宅時間をずらしてもらえる可能性があります。
第2回目以降の期日
前回期日から約1ヶ月後に次の期日が設定されます(もっと日にちが空くこともあります)。第2回以降も初回と同様の流れで進みます。親権が争われている場合に、裁判所が、期日中に、子どもの監護状況についての調査を行うことがあります。
調停終了
調停は、夫婦が合意に至り調停が成立するか、反対に不調になるか、申立人が申し立てを取下げた場合に終了します。
①調停成立
調停の結果、離婚するやその条件について 合意に至った場合、調停が成立します。調停が成立すると、裁判所は、その内容を調停案というかたちで文書にしてくれます。調停案が、自分が合意した内容と相違がないか、漏れている点がないか、よく確認します。問題がなければ、調停案に同意します。そうすると、調停案の内容が、約1週間後には、調停調書になります。調停調書は郵送してもらうこともできますが、調停離婚が成立した場合、申立人は、成立から10日以内に調停調書を持って離婚届を役所に提出しなければならず、郵送してもらっていると間に合わないので、裁判所に取りに行くことになります。調停調書を受け取ったら、役所に離婚届を提出します。なお、調停調書は確定判決と同じ効力があり、調停調書に記載されている義務(養育費の支払い等)が履行されない場合は、強制執行を申し立てることができます。
②不調(調停不成立)
調停で合意に至る見通しが立たない場合は、調停委員会は調停を不成立として終了させます。この場合は、不調調書が作成されます。不調となった場合の後の展開としては、裁判、審判、再協議の3パターンがあります。
③申し立ての取下げ
申立人が申し立てを取下げた場合も調停は終了します。
離婚調停にかかる期間は?
離婚調停にかかる期間は、6ヶ月くらいのことがもっとも多いですが、1ヶ月で成立することもあれば、1年以上かかっても成立しないこともあり、まちまちであるといえます。
離婚調停を欠席するとどうなる?
調停期日に欠席すると、一方当事者のみ出席して調停が開かれます。調停自体は開かれても、やはり、一方当事者のみの出席では実質的な進展は乏しいでしょう。ただ、調停委員としては、一方当事者の主張のみを聴いてその期日を終えることになるため、調停委員に与える印象としては、出席当事者に有利なものとなる可能性があります。ですので、期日の都合が悪くなってしまった場合は、期日の変更ができないか裁判所に尋ねてみましょう。期日通知書に担当書記官の記載があるでしょうから、そのような場合は連絡してみましょう。
もっとも、期日の変更をお願いしても、認められず、開催され欠席になってしまうこともあります。裁判所や相手方の事情もあるので、必ずしも思い通りにはならないのです。仮に期日の変更が必要なく欠席でよいと思っている場合でも、裁判所への連絡はやはりしておきましょう。連絡しても欠席理由を根掘り葉掘り聞かれることはありません。連絡をした時に次回期日の希望を伝えることもできます。無断欠席の場合は、次回期日の希望についてのヒアリングはなく、期日が決まってから期日通知書が送られてきて期日を知ることになります。
また、連絡なく度々欠席すると、裁判所から出頭勧告があります。出頭勧告を無視して、さらに欠席を続けた場合、5万円以下の過料(「かりょう」と読みます。制裁の一種です。)が科されることがあります。もっとも、過料を科される前に、欠席理由や調停に関する意向の聴取が電話や書面であります。そこでよほどへたな態度をとらない限り、実際に過料を科されることは少ないでしょう。
そして、欠席が多く調停が成立する見込みがない場合は、調停自体が不調となり終了します。不調となった場合に、そのまま審判に移行することがあります。審判では調停の内容を基に判断が下されるため、調停に欠席して必要な主張を怠った場合は、不利な審判が下される可能性があります。なお、審判に移行する場合は、離婚をすること自体には双方異論がなく、離婚の条件について争いがあるような場合です。