不倫・浮気した側は親権を獲得できない? 判断基準と親権決定の流れ
配偶者以外の方と不倫(浮気)をした側は、有責配偶者となります。しかし子どものことを大切に思っており、離婚することになっても親権を取りたいと考える方もいるでしょう。
そのなかには、親権者はどのような流れで決まっていくのか、親権争いが生じた際はどのように解決していくのか、また養育費の決め方など、疑問に思うことがあるはずです。
本コラムでは、親権者を決めるときの判断基準や流れ、また子どもの養育費の相場や注意点について、ベリーベスト法律事務所 離婚専門チームの弁護士が解説します。
1、不倫(浮気)した側であっても、親権を取ることは可能
自分の不倫(浮気)によって離婚に至った場合、相手に慰謝料を払うなど、不利な立場になることはやむを得ません。
不倫は、婚姻した夫婦としては違法な行為であり、配偶者との関係では不法行為責任を負うからです。したがって、不倫をした側は、相手配偶者に対して、不貞慰謝料を支払う必要があります。また、不倫は法で定められた離婚原因であるため、相手が離婚を望むならば、それを拒否することはできません。
しかしそれは、あくまで夫婦としての問題です。子どもとの関係、つまり、親権者をどうするか、そして養育費をどう負担するかという点は、浮気をしたこととは別の問題です。
浮気をした側の親でも、子どもの親であることには変わりありません。親権者になる可能性も十分にあります。
2、親権者決めの判断基準と決定するまでの流れ
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(1)親権者を決める上での判断基準
親権者としてどちらがよりふさわしいかは、離婚や夫婦間のトラブル自体とは別に判断されます。具体的には、以下のような観点が重要とされています。
●継続性の原則
これまで、主に子どもを監護養育していた側が今後も子育てを継続するべしという考えです。子どもが小さい場合は、母親とのかかわりが大きいので、母が有利になりがちです。
子どもの年齢が大きくなるにつれ、母親への依存度は低くなります。離婚時点から子どもの出生までを振り返って、いままで父と母のどちらが主に監護養育してきたのか、普段の生活から病気のとき、学校行事の参加などのいろいろな事情から判断することになります。
また、単に親とのかかわりだけでなく、周囲の環境との関係も影響します。つまり、転居や転校によって環境が大幅に変わるよりも、それまでの環境を継続させる方が望ましいという意味です。
●母性優勢の原則
母性というと母親を有利とするように読めますが、そういう意味ではありません。母性的な立場にあった側に親権を認めようという考えです。
家庭によっては、父親が母性的な立場で子どもと関わっている場合もあります。もっとも、実際には母親が母性的な立場を担っているケースが多いと思われます。
●きょうだい不分離の原則
きょうだいがいる場合、できるだけきょうだいを分けることなく一緒に養育させようという考えです。きょうだいは、お互いに影響を受け合ってともに成長する大切な存在です。特に離婚によって子どもにとっての家庭環境は激変しますから、その負担を小さくするためにも、きょうだいはできるだけ一緒に育てたほうが健やかな成長にとって望ましいと考えられています。
●子の意思の尊重
親だけでなく、子ども自身の気持ち・意思をできるだけ尊重しようという考え方です。
法律上は、家庭裁判所で親権者指定・変更の審判を行う際、15歳以上の子どもについて必ずその意見を聴取しなければならないと定めがあります。たとえ15歳未満でも、できるだけ子ども自身の意思を尊重するべきです。
とはいえ自分では正直に気持ちを話せない子どももいますから、調査官が子どもに面談したり、親子交流の機会を設けてその様子を調査官が観察するなど、いろいろな手法で子どもの意思を反映する手続きが用意されています。 -
(2)親権者を決めるまでの流れ
①まずは夫婦で話し合う
家族の問題は、まず夫婦で話し合いをします。妻が浮気をした場合、夫から激しい怒りをぶつけられ、激しい親権争いに発展することもあります。実際、浮気をした妻に子どもを渡すなんて絶対に考えられないという夫側の意見は、よく耳にするところです。
しかし、浮気をしたことと、親権とは別問題です。妻が自分のほうが親権者としてふさわしいと思うなら、安易に譲ることなく親権を主張してください。
話し合いの結果、親権者が決まらなければ、そもそも離婚協議自体を進めることができません。この場合、家庭裁判所の調停を申し立てることになります。
②家庭裁判所の調停へ
話し合いで決まらなければ、家庭裁判所の離婚調停手続きで親権について話し合います。
調停では、男女1人ずつの調停委員2名が事件を担当します。この調停委員に対し、それぞれが自分の主張を述べて、話し合いを進めていきます。
家庭裁判所では双方の意見を聞くだけでなく、調査官が家庭事情やこれまでの子どもの養育の歴史や状態など監護権の状況、離婚後の養育の具体的な環境などを調査し、また、子どもの意見も可能な限り聞き取るなどして、話し合いを進める材料としていきます。
実際、親との調査面談、親子交流の観察、学校や幼稚園の先生への聞き取り、家庭訪問などが行われます。この調査では、子どもが親と愛情に満ちた生活を送れるか、家庭内で落ち着いて勉強できる環境にあるか、子どもがひとりになる時間がないか、家の中は整っているか、親以外に子育てを手伝う人(監護補助者といいます)がいるか、といった点が重視されます。
経済力はさほど重視されません。したがって親権を取得したいのなら、バリバリと仕事に勤しむよりも子どもに十分な時間をとることができること、親子関係が安定していること、他の親族や学校・近所との連携もとれることなどを説明できるとよいでしょう。
なお、調停とはあくまで話し合いの場を裁判所内に設けるだけであり、裁判所が何らかの最終決定や判断を行うものではありません。
したがって、調停でもお互いが親権を譲らず、話がまとまらなければ、親権者未定のまま調停は終了します。
③審判・裁判
調停が成立しなければ親権を決める審判に進むこともできますし、離婚訴訟を訴えて、訴訟の中で親権を争うこともできます。審判も訴訟も、本人同士ではなく、裁判所が最終決定権を持っています。
浮気された側の親は、相手の浮気の事実を強く挙げて、親としてふさわしくないと主張してくる可能性があります。もちろん、浮気をしたこと自体は親権の点で有利とはいえません。
しかし重要なことは、今後、子どもときちんと養育していけるかどうか、子どもの福祉や幸せにどう関わっていけるのかということです。浮気した側としては、浮気はしたけれども、子どもへの愛情は変わりがないこと、今後も親としての責任は十分に果たし、子どもの幸せのために尽くすこと、子どもの成長にふさわしい環境を十分に用意できることなどを、具体的に主張立証する必要があります。
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なる場合がございます。
3、養育費の基礎知識と注意点
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(1)養育費とは
養育費とは、未成年の子どもが自立するまで健全に成長するために必要な費用のことです。
離婚して親権を失っても、親であることに変わりはありません。子どもに対する扶養義務は、子どもが自立するまで残ります。
この場合の扶養義務とは、親と子が同等程度の生活ができるようにするため義務とされ、ひとつのパンを分け合う義務ともいわれます。
この扶養義務を根拠として、親権を持つ親は、親権を持たない親に対して養育費を請求することができるのです。 -
(2)養育費の相場
養育費の金額は、法律などで細かく決められているわけではありません。したがって、夫婦で話し合って納得のいく金額で合意すればそれで決定です。
話し合いで決まらない場合は、裁判所の調停や審判で決めることもできます。この場合に参考とされる金額が養育費の相場といえるでしょう。
基本的には夫婦双方の収入と、子どもの年齢人数によって計算されます。
ベリーベスト法律事務所では養育費計算ツールを用意しており、こちらでおおむねの額を計算できます。
参考: 【無料で使える】 養育費計算ツール|ベリーベスト法律事務所
なお実際は、住宅の状況(家の名義やローン、家賃など)や、学校が公立か私立か、といった細かい事情で変わってきます。 -
(3)将来的なトラブル防止のために公正証書を作成
養育費を夫婦間で取り決めた場合、口約束やあいまいな内容の書面で済ませてはいけません。調停や審判であれば、裁判所が正式な書面(調書)を作成してくれますが、本人同士で決めた場合は裁判所が関与してくれません。
この場合は、必ず、合意内容を公正証書にして、相手からの支払いがストップした場合に対処できるようにしておくことが重要です。 -
(4)養育費が支払われなくなった場合の対処法
養育費の支払いは、長い場合で10年以上にわたって続きます。この間に、相手が支払いをストップしてしまうことは、残念ながらあり得ることです。このように、途中で相手からの支払いが止まってしまった場合、どのように対処すべきかを説明していきます。
①まずは話し合い
相手と連絡が取れる場合は、まず連絡して話し合いましょう。相手の収入が減ったなど、何らかの理由がある場合もあります。なお、相手の所在や連絡先がわからなくなってしまうと、話し合いや、そのほかの強制手段も困難となります。離婚の際には、相手の連絡先や住所などに変更があれば、こちらに知らせてもらうように約束しておくべきです。
②家庭裁判所から履行勧告をしてもらう
家庭裁判所の調停や審判、裁判などで養育費の金額などを決めた場合は、家庭裁判所に申し出て、相手に支払うように連絡してもらうことができます。これを「履行勧告」といいます。
履行勧告に費用は掛かりません。単に家庭裁判所の職員が、「支払ってください」と連絡するだけですが、裁判所からの連絡を受けただけで、支払いを再開する人はそれなりにいます。
ただ、あくまで「勧告」であって、強制力はないため、相手が支払わなければ強制的に取り立てることはできず、それまでということになります。なお、家庭裁判所を通していない場合、たとえば養育費を口頭で決めた場合はもちろん、公正証書にした場合でも、履行勧告制度は利用できません。
③強制執行を申し立てる
家庭裁判所調停、審判、裁判などで養育費を取り決めた場合、そして、公正証書(強制執行認諾文言を含む場合に限る)で養育費を取り決めた場合はいずれも、裁判所に強制執行の申し立てを行い、養育費を取り立てることができます。具体的には、相手名義の預貯金や、給料、不動産などが差し押さえ対象となります。
4、まとめ|親権・養育費問題は弁護士に相談しよう
養育費は、子どもが健やかに成長するための大切な費用です。
離婚相手と冷静に話し合うことは疲れることですし、ましてや夫婦の一方が不倫(浮気)をしていた場合、親権と養育費のことで感情的な争いが大きくなるケースもあります。
しかし、不倫をしたことと親権や養育費は、基本的には別の問題です。子どもの将来は親が責任を持つべきであり、話し合いが苦痛だからと言って放棄するようなことは避けなければなりません。
親権や養育費の争いは、事案によって主張すべき内容や金額も異なります。複雑な法的知識を要する場面もあり、ときには、事件が長期化して子どものストレスになることも考えられるでしょう。
だからこそ、親権や養育費の問題は早めに弁護士に相談して方針を決定し、速やかな解決を目指すことが重要です。
ベリーベスト法律事務所では、不倫をした側が親権と養育費を請求するケースでも多数の実績があります。離婚専門チームの知見有する弁護士が親身にお力になりますので、お気軽にご相談ください。
- 所在地
- 〒106-0032 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
- 設立
- 2010年12月16日
- 連絡先
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[代表電話]03-6234-1585
[ご相談窓口]0120-663-031※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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