障害年金の財産分与について

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離婚給付において障害年金が問題となる場合

障害年金は、財産分与の対象か?年金分割が可能か?

離婚に際して、配偶者の一方が障害年金を受給している場合、離婚給付との関係で問題が生じることがあり得ます。

ひとつは、財産分与の金額を算定するにあたり、障害年金が共有財産として財産分与の対象となるのかどうか。もうひとつは、離婚にあたって年金分割の制度がありますが、障害年金を受給している場合にも年金分割が可能かどうかです。

配偶者が障害年金を受給している場合の財産分与

障害年金は、財産分与の対象とはなりません

障害年金を含めて、離婚時の年金については年金分割の制度がありますので、年金については年金分割の制度の中で解決します。したがって、離婚後に受け取る障害年金については、別途財産分与の対象にはなりません。

婚姻期間中に既に受け取っている障害年金は、財産分与の対象になります

それでは、婚姻期間中に既に受け取り、障害年金がもとになっている現金や預金についてはどうでしょうか?

財産分与とは、婚姻生活中に築いた財産を、離婚時に分け合うというものです。
婚姻中に夫婦両方の名義や片方の名義で得た財産は、原則として夫婦の共有財産と推定され、財産分与の対象となります。その例外として、婚姻中に得た財産であっても、相続や親族からの譲渡など、夫婦の協力関係や貢献とは関係なく得た財産については、特有財産として財産分与の対象外となります。

障害年金は、受給権者の一定の障害等が要件となって給付されるものであり、ここからは特有財産のように見えるかもしれません。しかしながら、その給付額には、配偶者の生活維持を考慮した加給がされる場合もあり、配偶者も含めた家族の生活費等として使われることが予定されたものです。そのため、婚姻中に障害年金として受け取った現金やそれによる貯金は、受給権者の特有財産ではなく、夫婦の共有財産として財産分与の対象になります。

「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。

適切な分配・損をしないために離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください

障害年金と年金分割

障害年金を受給している場合「3号分割」ができない場合があります

では、年金分割はどのようになるのでしょうか。
配偶者が障害厚生年金を受給している場合には、年金分割に影響が生じる場合があることに注意しなければなりません。

まず、年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。3号分割は、平成20年4月1日以降に夫婦の一方が第2号被保険者で他方が第3号被保険者である期間がある場合に、第3号被保険者であった者の請求により、当該期間の厚生年金記録を強制的に2分の1にする制度です。

合意分割とは、当事者間の合意又は裁判手続きによって定められた按分割合に基づいて、厚生年金記録を分割することができる制度です。

婚姻期間中に、夫婦の一方が第2号被保険者で他方が第3号被保険者である期間がある場合には、その期間が平成20年4月1日以降だけであれば、通常、按分割合が有利になるのであれば合意分割を、そうでないのであれば3号分割を行います。平成20年3月31日以前も含む場合には、平成20年3月31日以前については合意分割をしなければならず、平成20年4月1日以降はどちらか有利な方を行います。

それでは、障害年金を受給している場合には、この年金分割はどうなるのでしょうか?
結論としては、年金分割を請求される側が障害厚生年金を受給していると、3号分割ができない場合があります。

具体的には、平成20年4月1日以降に、障害年金支給のための障害認定日がある場合には、3号分割はできません。

3号分割が認められると、平成20年4月1日以降の婚姻期間中において、夫婦の一方が第2号被保険者で、他方が第3号被保険者だった期間がある場合、年金額計算の基礎となる厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)が、自動的に2分の1ずつに分割されます。

第2号被保険者であった者が障害厚生年金の受給者であり、上記の期間が障害厚生年金の受給額の算定基礎とされている場合は、3号分割によって、年金額の基礎となる額が下がる結果、障害厚生年金の受給額が下がることになってしまいます。病気やけがによって支給される障害年金の制度趣旨からすれば、障害者が受給する年金額が強制的に減らされるのは妥当でないため、この場合の3号分割はできません。

一方で、障害認定日が平成20年3月31日以前であれば、3号分割をしても、年金額が減らないため、3号分割が可能です。

もっとも上記の3号分割に関する取り扱いにかかわらず、障害年金の受給側の同意があるならば、その自由意思を尊重するべきと考えられるため、障害認定日がいつであるかにかかわらず、合意分割は可能です。

上記を踏まえると、配偶者が障害年金を受給しているケースで、離婚の際に年金分割を請求する場合には、以下の対応をとることになります。

  1. 障害認定日が平成20年3月31日以前であれば、平成20年4月1日以降分については3号分割を請求する(合意分割の方が有利な条件であれば、合意分割も可)。平成20年3月31日以前分については、合意分割をする。
  2. 障害認定日が平成20年4月1日以降であれば、全体として合意分割をする。

その他の障害年金に関する注意事項

離婚により「配偶者加給年金」の受給金額が変わる場合があります

財産分与や、年金分割とは直接的に関係しないことですが、離婚により障害年金の受給金額が変わる場合があります。

それは、障害年金受給者が、配偶者がいるとことによる「配偶者加給年金」を受給していた場合です。これは、障害年金受給者が配偶者の生計を維持していることから認められることから年金額が加算されるものです。
したがって、離婚することで生計を維持すべき配偶者が存在しなくなる以上、加算はされなくなります。

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