離婚時年金分割と財産分与の関係

目次 [非表示]

年金は財産分与の対象となるか

離婚時年金分割と財産分与の関係

従来、離婚時の年金の扱いについては、離婚後扶養の一要素として考慮するという立場の判例が多くあったため、年金については財産分与として扱われてきました。

しかし、平成16年6月の年金に関する法律の改正により、平成19年4月から年金分割制度が施行されました。これにより、年金が財産分与の対象となるかどうかの問題はなくなり、年金分割は財産分与とは別の問題として扱うこととなりました。

離婚時年金分割の種類

年金分割は、「年金が給付されるときに、配偶者に支給される年金の一部が現金で分けられる」ものだと思われがちです。

ですが、実際には婚姻期間中の「保険料納付記録」を配偶者間で分割する制度です。そのため、年金を受け取る時点では、「修正された保険料納付記録」に基づいて、それぞれに年金が支払われることになります。

「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。

適切な分配・損をしないために離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください

離婚時の年金分割の種類

年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。

離婚時年金分割と財産分与の関係

まず、平成19年4月以降に離婚した場合に適用される「合意分割」と呼ばれる制度です。

この制度は、原則として婚姻していた期間について、配偶者間の合意(あるいは合意がされない場合には裁判所の按分割合決定)により、保険料納付記録を分割するものです。

「3号分割」とは

つぎに、平成20年4月以降に離婚した場合に適用される「3号分割」と呼ばれる制度です。
この制度は、平成20年4月以降の婚姻していた期間のうち、一方の配偶者が3号被保険者であった期間について、配偶者間の合意や裁判所の按分割合決定がなくても、年金事務所への申請のみで保険料納付記録を分割するものです。

離婚時年金分割の注意点

期間

年金分割は、平成19年4月に施行された制度であるため、同年3月以前に離婚した夫婦には適用されません。加えて、「合意分割」については離婚から2年以内という期間制限があるため、注意が必要です。

分割の按分割合

また、年金分割の按分割合には決まりがあります。まず、合意分割という名前からは、当事者間の合意があればいかなる按分割合での分割もできそうですが、これには制限があります。

年金分割の按分割合の制限

  • 標準報酬額が少ない配偶者がさらに少なくなるようには合意できない
  • 標準報酬額が多い配偶者が他方よりも少なくなるようには合意できない

つぎに、3号分割では、該当期間につき按分割合は2分の1と決められていて、変わることはありません。この決まりを覚えていないと、年金分割で損をすることになりかねませんから、注意が必要です。

平成20年4月以降に離婚した場合

平成20年4月以降に離婚した場合には3号分割が適用されますから、平成20年4月以降の婚姻していた期間のうち、一方の配偶者が3号被保険者であった期間については、3号分割の方法で年金分割ができますが、以下の期間の場合には3号分割では解決できません。

3号分割では解決できない期間

  • 平成20年4月以降の婚姻していた期間のうち、いずれの配偶者も3号被保険者でなかった期間
  • 婚姻期間のうち平成20年3月以前の期間

そのため、3号分割が適用可能な期間の離婚であっても、合意分割をしなければならない場合があることに注意が必要です。

弁護士からのアドバイス

弁護士

合意分割には、按分割合の交渉が必要になったり、各家庭裁判所によって決められる按分割合に差があったりしますから、弁護士など専門家に相談する必要があるでしょう。

最後に年金分割の対象とならない年金も存在します。既に述べたように、年金分割の対象となるのは、年金のいわゆる2階建て部分である厚生年金です。

つまり、3階建て部分(確定給付企業年金や適職年金等)については、年金分割の対象ではありません。そのため、従前通り、財産分与の申し立てを行っていく中で、その一要素として、取り上げていく必要があるでしょう。

離婚の基礎知識へ戻る
PAGE TOP