配偶者が経営する会社の株式が財産分与の対象となるか
財産分与の対象となるのは、「共有財産」
離婚をする際、夫婦が所有する全ての財産・資産が財産分与の対象となるわけではありません。会社経営者の株式・会社の資産が問題となる財産分与の場合でも、一般的に、財産分与の対象となるのは、「婚姻し、夫婦が共同生活を初めてから別居に至るまでの間に、夫婦双方の寄与により増加した共有財産」となります。
具体的に株式が財産分与の対象となるケース
配偶者が有する株式が、婚姻後に取得したものであり、他方配偶者の協力のもと取得されたものであれば、当該株式は「共有財産」ということになり、財産分与の対象となります。
もっとも、株式が財産分与の対象となる場合であっても、必ず所有する株式自体を分与割合に応じて分与しなければならないというわけではなく、所有している株式を金銭的に評価し、その評価額につき、分与割合に応じて、他方配偶者に金銭で支払うという形をとることが多いです。
財産分与の対象とならない「特有財産」
会社経営者の株式・会社の資産について、婚姻前から所有していた財産や相手方の協力とは関係なしに取得した財産は、「婚姻中、夫婦双方の寄与により形成維持してきた」ものとは通常いえないことから、原則として財産分与の対象とはなりません。これら財産分与の対象とならない財産は、「特有財産」と呼ばれます。
具体的に株式が財産分与の対象とならないケース
配偶者が有する株式が、婚姻前から所有しているものや、相手方の協力とは無関係に取得されたものだとしますと、当該株式は「特有財産」ということになり、基本的には財産分与の対象にはなりません。
「離婚時の財産分与は弁護士にご相談ください」のページでは、財産分与の対象になるもの・ならないもの、注意点などについて解説しています。ぜひご参考ください。
配偶者が経営する法人の資産は、財産分与の対象となるか
会社の資産は財産分与の対象にならないのが原則
配偶者と法人とは法人格が別ですので、法人の財産は財産分与の対象とならないのが原則です。
個人資産と同視できる場合には、対象になる可能性も
法人の財産が実質的に配偶者の個人資産と同視できる場合には、分与の対象になるとした裁判例(大阪地判昭48.1.30判時722・84)があります。同裁判例は、原・被告が所有するマンションの管理会社として設立され、原・被告を中心とする同族会社で、原・被告がその経営に従事していたという事情の下で、会社名義の財産も財産分与の対象になるとしました。
なお、事業用財産についても、夫婦が協力して形成したものであれば、財産分与の対象となると考えられています(東京高判昭54.9.25判時944・55他)。